Zoom疲れ(Zoom fatigue)の原因と解決に関する科学的研究

StanfordのVirtual Human Interaction Labを率いるJeremy Bailenson博士たちの科学的な研究が、査読付専門誌に最近掲載されました。成果を簡単にまとめたものが記事になっていたのでシェアします。とても参考になると思うので下記に整理。ちなみに、「zMTG」の略語は「Zoomや類似のソフトを用いた会議や会話」のことを指して私はよく使っています。

https://greatergood.berkeley.edu/article/item/four_reasons_why_zoom_can_be_exhausting

原因を心理科学的に分析したとき、1つ目は「不自然に長いアイコンタクト」が挙がります。じっと直視されるアイコンタクトは、それだけで大きなストレスとなり社会不安が増大することは多くの社会心理学的な研究で実証されています。だから、我々はそれを無意識的に避けて視線を外す。「ガンを飛ばす」不良たちは、「この強いストレスに耐えられるんかい、あぁん?」と我慢比べをしている訳です。zMTGの顔ぶれはもちろん怒ってはいませんが、それでも多くの顔から「生ぬるくガンを飛ばされ続けている」状況な訳で、なかなかのストレスです。

2つ目の原因は「リアルタイムでもたらされる過剰な自己フィードバック」。zMTGでは己の顔も小さく窓に現れます。「どう映っているか」が気がかりなこともあり、そこをONにして参加している方も多いでしょう。でも、過去の多くの心理学研究から、我々は己れの顔を鏡で見ているとき、そうでないときよりも自己批判的な感情や態度を持つことが判明しています。「自分と向き合う」ことのメタファーとして「鏡を見る」が用いられますが、言下にある「自己批判的に」という意識は実は当たっていた訳ですね。当然、これをずっと行うzMTGは、意識せずとも我々を疲れさせるという訳です。

そして3つ目には、「身体の動きが制限されることによる疲れ」が挙がります。純粋に脳みそ系ワークであっても、定期的に身体を動かすと認知作業の効率が向上する研究結果も多く存在します。デスクワークに集中している人をしばらく観察していると分かりますが、指や手でジェスチャーしたり、顔に触れたり、ぶつぶつ独り言を言ったりと、意外と身体をたくさん動かしていることが分かります。じーっと身じろぎもせずに集中することは意外と難しい。でも、それを後で指摘すると「えっ、そんなことしてた?」と驚かれます。無意識的にリズムをとっているようなもんですね。ところがzMTGでは微動したい衝動すら意識的に抑えなければいけない気がする。強烈にストレスフルです。よって、ときどき映像を切るのは、とてもよいことです。

最後に4つ目。これは、「非言語行動からの情報が減り言語情報だけを拾うための疲れ」。リアルな会話や会議の場合、我々は話者の話し方だけでなく、彼らの服装、聴衆の反応や拍手、全体的な空気や雰囲気、あるいは周りの景色すらも含む形で、その「話の場」を無意識的に~つまりあまり認知リソースを使うことなく~判断し、話者が言語情報を介して伝えようとしているメッセージを軸にしつつ総合的に読み取ります。これは誰もがほぼ自然に行なっていることです。そして、そういう非言語的な情報が我々のcommunicationの8割以上を占めると過去の研究は教えます。だから、リアルな総合的なやりとりはずっと楽であるのみならず、実はとても正確に話者の意図を読む(「言外の意」も読む、という点で)ことになることが分かっています。

ところがzMTGはほぼこれがない。Bailenson博士も言うように、通常の会話で聞き手がふと外す視線が持つ意味と、zMTGで部屋に入ってきた子供に気づいて泳ぐ視線とは、全く違う意味を持ちます。後者の場合、その状況が相手に見えていれば無問題ですが、PC画面だけで判断する相手である場合、自分の話に集中していないように感じられても仕方ありません。

どうですか?これら4つの視点で自分のzMTGを反省して、フォーマットをに工夫をすると「z疲れ」はぐっと減るかも知れませんね

Translate »